東かがわの棚田と溜め池へ行く途中、山間部の道でやたらと茶褐色のチョウが目についた。奥に行くにつれ、かなりの乱舞になって車にぶつかる個体もでてくる。実際、アスファルトの路上にチョウが落ちている。
テングチョウだった。
頭の突起が天狗に似ていることからの命名だ。昔はテングチョウ科として独立した科で扱われ、日本ではこのテングチョウ一種のみだった。現在はタテハチョウ科テングチョウ亜科に分類されている。裏面は枯葉の保護色になっている。成虫で越冬する種なのだ。
棚田と溜め池の活動場所でも盛んに飛んでおり、ここで長く観察してきたHさんに聞くと、近年は毎年のように大発生しているという。とくに、新しく造成し直した棚田の水漏れ部分には驚くほど大量の個体が吸水に来ている。
動画でも見ていただこう。
調べてみると、西日本を中心にこのところ大発生しているようだ。幼虫の食樹はエノキ。かのオオムラサキをはじめ、エノキに依存するチョウは他に3種(ゴマダラチョウ、ヒオドシチョウ)いるのだが、このチョウの一人勝ちは何か理由があるのだろうか?
(天敵である寄生蜂の減少などに関係してはいないか?)
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棚田の中にはオタマジャクシがいっぱい。ミジンコもたくさん泳いでいる。
タイコウチを久しぶりに見た。
ギンヤンマが飛んでいる。こいつは写真を撮るのは大変だ。ヤゴの抜け殻で・・・。
棚田と溜め池には様々ないのちのうごめきが輝いて、桃源郷の様相を呈していた。稲作という人間活動にこれだけの生き物が寄り添っていることが奇跡だ。ただし、作業を放棄すれば敷地はヤブになり、山林に還っていき、これらの生き物たちは消えていく。
動画もアップ。
私も子供のころ父方の実家で田んぼを観察してきたが、基盤整備された田んぼは工場のようで、水系分断や農薬のこともあって生き物たちは極端に少なかった。
ここではプランクトンから昆虫、両生類、ヘビや猛禽に至るまで、緻密な生態を見せてもらえそうだ。しかし、このような農地は労多くして収穫は少ない。生き物だけのために棚田を維持できる人はなかなかいない。
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讃岐は雨が少ないのでダメージは少ないかもしれないが、できれば皮を剥いてから屋根をかけておきたいヒノキ丸太。曲がりや節の多さで商品にならないとはいえ、住宅に使えないというわけでは決してない。
節だらけのヒノキは重い! 丸太を選別するだけで汗だくになってしまった。