Gomyo倶楽部が再生・維持のお手伝いをするため池は、ごく小さな昔のため池で、現在は使われておらず(棚田はすべてため池の上流にあります)、ゆる抜きの水門は何年も閉ざされたままです。
コンクリート護岸されず、ブラックバスやブルーギルのヤミ放流からも逃れ、創成当時からの自然状態を維持したこのため池は、ため池密度日本一という香川県下においても、大変貴重なものです。
たくさんの魚類とトンボの幼虫、甲殻類、水生昆虫が棲息しています。また水草類も多いです。その水際の小宇宙は宝石のようで、生き物の動きを眺めているといつまでも飽きません。
春のため池観察会にて(2015.4.25)
魚類・甲殻類
カワバタモロコ(川端諸子、Hemigrammocypris rasborella)が多数棲息しています。香川県レッドデータブックに掲げられた魚類19種のうち絶滅危惧I類(CR+EN)8種のうちの一つです。
全長3〜6cmの地味なコイ科の魚ですが、日本固有種で本州・四国・九州に分布するもののいずれも不連続・局所的な分布で、四国では瀬戸内海側(徳島県と香川県)にだけ棲息しています。
他にモツゴ(クチボソ)、ドジョウ、トウヨシノボリ、甲殻類はヌマエビ、テナガエビが棲息しています。
上がモツゴ、下がカワバタモロコ(2015.4.25)
昆虫類
ゲンゴロウ、クロゲンゴロウ、タガメ、コオイムシなどが棲息しています。とくにゲンゴロウとタガメは全国的にも貴重なもので、その存在は特筆に値します。
トンボ類はまだ調査の途上ですが、オニヤンマやギンヤンマ類の飛翔をよく見かけ、イトトンボ類、春にはサナエトンボの仲間も多いです(オグマサナエが確認されています)。
コオイムシとタガメ(2015.4.25)
タガメ(2015.4.25)
平成13年(2001年)に香川県環境局が発刊した『水生昆虫保護管理マニュアル』には「ゲンゴロウは香川県下では標本は1個体だけ、生息は白鳥町の谷池で確認された」とあります。
タガメにいたっては、
現在四国では、愛媛県の南部のごく一部の地域と徳島県の伊島での生息が確認されているだけです。香川県では絶滅してしまった可能性があります。香川県の記録は、ゲンゴロウと同様、昔はため池などに普通にいたためか生息記録が全く残っておらず、標本も豊島弘氏採集の国分寺町の標本が1個体あるだけです。
と書かれており、Gomyo倶楽部のフィールドのため池と棚田がいかに貴重であるかが分かります。
水草
ヒメガマ、コウホネ、クサヨシなどの抽水植物や、沈水植物のヒルムシロ属の一種(イトモ類)が生育しており、水深が深いため池中心部には浮葉植物のヒシが広く繁茂しています。また、水際の泥湿 地にはセリ、ミゾソバ、キカシグサなどの湿生種が生えています。
コウホネ(2014.5.18)
抽水植物:根が水底に固着し、植物体の一部が水面を突き抜けて空気中に出るもの。
沈水植物:根が水底に固着し、植物体全体が水中に沈むもの。
浮葉植物:根が水底に固着し、水面に浮く葉(浮葉)を展開するもの。
※定期的にため池とその周辺の観察会を行なっています。長く多大な努力によって守られてきた水域です。稀少動植物の採集は厳禁です。
▼H氏らによるこれまでの取組み経過と成果
2002年(1年目):棚田の復元
2003年(2年目):7月湛水(ガムシの飛来多数)
2004年(3年目):6月稲作1年目、台風16号と23号の被害、シマゲンゴロウの飛来多数、コガタガムシの記録、コオイムシの繁殖
2005年(4年目):激甚災害認定によるため池工事
2006年(5年目):稲作2年目・田んぼ3枚、シマゲンゴロウの飛来
2007年(6年目):棚田の復元、稲作3年目・田んぼ4枚
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