予報では雨の確率が高かったのですが、なんとか曇り空で保ってくれ、2021いきもの観察会のスタートです。
まずは代表の私(大内)からフィールドの概要説明を。ここはいわゆる谷津田で上流に民家はなく、希少種も多数いるという環境的にすばらしい場所なのですが、平成の大型台風で土石流被害に遭い、堰堤や護岸など土木工事が入りました。しかし調査により希少種が確認されたため、香川県初の環境親和型の工事になりました。とくに水路の護岸は穴あきコンクリートブロックの2面張で、底面は地面露出型です。護岸や底面には動植物も定着しており、その自然再生を活かすような手入れを続けてきました。
しかしコンクリートの締め付けは大地にかなりの重圧をかけています。なので植物が苦しげな表情をしています。そこで土圧のもっとも集中する「斜面変換点」に空気の抜きを作ってやります。
こちらでも。ここはとくに高いコンクリート擁壁が作られたために、空気が抜けずに山側の斜面が崩壊し始めています。この春のエビネ開花時期にはその土砂で一部の群落が土で埋まっていました。
擁壁の天端に空気抜きの穴を掘ってやると山側の崩壊を食い止めることができます。ダブルスコップがあると仕事が早いです。
掘った後は穴が塞がらないように竹や木の枝を放射状に穴に差し込み、その上に細い枝葉を渦巻き状に被せます。今回は省略しましたが、中に炭を入れるとさらに効果的です。
この「点穴」や「水脈溝」に使う素材は、周囲のヤブを払い風を通す草刈りや灌木の剪定で得ることができます。つまり環境を再生し整えながら現地調達できるという一石二鳥なのです。
広場ではため池のいきのもたちの観察テントができています。
そしてお待ちかねの「薪火を使った野外料理体験」! 骨つきイノシシ肉の下ごしらえをしているところです。移植して育てていたローズマリーが活躍しました。
石窯を十分温めておいて、炭と薪を片側に寄せてスペースを作ったら・・・
お肉の投入です。タマネギを下に敷いて味付けは塩コショウのみ。ニンニクとローズマリーで香りづけ。
昼過ぎからスープ用の鶏ガラストックを仕込んでおきました。小型のタンドールは天端にレンガを3つ置いてゴトクを作るとロケットストーブのように使えます(薪はレンガのすき間から落とす)。今回は隙間にもう一個のレンガを置いて(赤矢印)、鍋の把手に炎が当たらないようにカバーをしました。
スープの中に入れるお餅を焼きます。囲炉裏でできた熾炭を網のほうに移動して、それを熱源に焼くのですが、炭の出来が追いつかず、焼きのスピードが上がりません。なので網を囲炉裏の炎に近づけ、炎の側面の熱も利用します。側面ならススがつきません。
昔はこの焼き方に便利な「ワタシ」と呼ばれる曲線状の焼き網(下図)がどこの囲炉裏でもあったものでした。
鶏ガラのほかには香味野菜(フェンネル、ネギの青いところ、月桂樹の葉、人参の皮、ニンニク、ショウガ)などを入れてグツグツ2時間。それを濾し取ってから、ひよこ豆(水で戻しておいたもの)、ジャガイモ、タマネギ、マッシュルームを入れて炊いていきます。
焼き餅をさらに中華鍋でバター焼きしてスープに投入。パセリをちらして完成♬ 今回の具は、他の素材が肉々しいのであえて植物素材だけです。
囲炉裏とタンドール、そして石窯が並んでいるので、薪や炭の移動・・・という連携プレーもできて大変便利なレイアウトです。
しかし、子供たちが歩き回るので転倒などのトラブルには十分に気をつけねばいけません。大事なのは「人の動線をきちんと開けておくこと」。そこに荷物やイスた薪などを置いてしまいがちですが、そうすると歩きにくいだけでなく、風通しも悪くなります。長く風通しが悪いと→湿気がこもる→カビや腐朽菌が発生→虫が湧く(シロアリなど)という風化の連鎖がおきます。また、斜面の崩れやその上部のヤブ化も促進されます。
スープ作りで十分余熱ができたタンドール窯にタンドリーチキンの串をどんどん入れていきます。
上部と下部で温度差ができないように蓋をしてレンガを置き蓄熱させるといいようです。
タンドリーチキンの下漬けするペーストは・クミンパウダー、ガラムマサラ、チリパウダーの3種のスパイスと(ただしガラムマサラは混合スパイス)、ニンニク、ショウガ、レモン、塩、ヨーグルトです。
全部混ぜて塗るのではなく、まず前日に塩とレモンで水分を抜きながら下味をつけ、よく水気を拭き取ってからスパイスパウダーをすり込み、数時間後にニンニクとショウガのすりおろし(たっぷり!)をまぶし、焼きの当日の朝にヨーグルトを塗って塩を追加し、ジップロックに保存して持参します。
こうするとスパイスと塩味がよく沁みていい感じに。最初から全部混ぜてしまうとボケた味になりがちです。
鶏の部位は手羽元が適しています。正肉なら胸を。胸肉の皮と脂は外しておきます。つけたままだと脂がしたって炎が上がり、煤けてしまうからです。
さて、暗くなって燈火観察の開始。
蛾や甲虫、水生昆虫の親虫たちがブラックライトの光に集まってきます。
ホタルも飛び始めました。今回参加してくれた地元のMさんの自宅前まで沢を下っていくと、沢沿いの森をバックに乱舞する姿が見えて感激しました。ヘイケボタルのこれだけの飛翔を見るのは僕も初めてでした。
捕まえてみると、ゲンジに比べてかなり小型です。しかし、このサイズで遠目にはあれだけの光を感じさせるのはやはり驚きでした。街灯や都市の光害のない五名という場所のせいもあるでしょう。
広場に戻るとフィールドの水路上でも数匹が光っていました。どうやら2面張の水路の中でも発生しているようで嬉しかったです。
ホタルの仲間は意外に種類が多く、全世界で2,700種類ほどいるといわれていますが、そのほとんどが幼虫期を陸上で生活する生態です。ゲンジボタルやヘイケボタルなど幼虫期を水中で過ごす水生のホタルは、世界でも数種類ほどしかいません。そのほとんどは日本を含むアジアの水田地帯に棲んでいるのです。
ゲンジボタルの幼虫がカワニナを食べるのに対し、ヘイケボタルはタニシやモノアラガイを食べます。これら水生貝類がいる水環境があるだけでなく、土の岸辺(土手)がないとホタルは生息できません。なぜならこの2つのホタルの幼虫は土の中で蛹(さなぎ)になるからです。
現在のGomyo倶楽部の水路はコンクリート2面張ですが、工事後この7年で底に土が堆積し、手入れ時にはそれをすべて取ることをせず、蛇行する澪筋(みおすじ)をつくって両側に土と植物の領域を残しています。ここで蛹化しているのかもしれません。
さて、羽化したホタルの一番の天敵はクモです。もし水路が草やぶに覆われていたら、クモの巣だらけになり、せっかく羽化した成虫はクモの巣にとらわれて餌食になってしまいます。そのためにも、水路の上の風通しを確保しておくのがいいのです。
かといって根こそぎ草木を刈る必要はありません。高刈りして植物の領域を残しておきましょう。それが腐植土をつくり地中の微生物を育ててくれます。
現在の基盤整備された、乾田化された田んぼ、コンクリート護岸の水路では、ホタルの幼虫は生きていけず、各地で激減・絶滅しています。農薬や生活排水に含まれる合成洗剤の影響もあるでしょう。それらは貝類の繁殖に致命傷を与えるからです。
というわけで、Gomyo倶楽部のフィールドはその意味でも大変貴重といえますね! 翌日はもんどり調査でドジョウやカワバタモロコを観察しました。
しかし、豊かだなぁ。こんなフィールドが香川県中に(いや全国に)増えていくといいですね!
ところで薪火を使うことが重要なのは、薪を入手することが山の手入れに直結するからです。それには高級薪ストーブの世界観でなく、やはり囲炉裏とカマドがよいのです。水路に生えた灌木も乾かしておけば小枝でさえ囲炉裏の薪になります。
薪からできた熾炭は料理だけでなく「大地の再生」の素材にもなり、木灰は畑や田んぼの肥料に使えます。薪火を使うことで田舎暮らしの循環は完結し、循環を重ねるほどに里山は重層的に豊かになっていくのです。
翌朝は「キョロロロ・・・」というアカショウビンの鳴き声がすぐ近くで聞こえました。奥山に生息する大変珍し赤い鳥(カワセミの仲間)です。日本にはカワセミ類はカワセミ、ヤマセミ、アカショウビンの3種が見られますが、アカショウビンだけが渡り鳥(夏鳥)で、冬はフィリピン諸島、マレー半島、ボルネオなどで越冬します。
ここでアカショウビンの声を聞いたのは二度目です(前回は2014年)。
記念に昔イラストマップに使ったアカショウビンのイラストをアップしておきましょう♬
ともあれ雨が降らずに(翌朝早く、かなりの雨が降りました)ホタルが見れて本当によかったです。参加者、スタッフのみなさまお疲れ様でした。
炭焼き窯もはやく使ってみたいので、梅雨明けにもう一泊したいですねww。