棚田でヒノキの玉伐り皮むき

伐採したヒノキと竹の片付けの手伝いをしてきた。ヒノキは棚田跡の周辺に植えられていたものなので、陽当たりと栄養が良いのか枝が張って曲がりも多い。小屋造りの材料にしたいというので、曲がりの少ない部分を4mに切り揃え、皮むきをすることにした。

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ここは過去の台風で谷と棚田が土砂被害を受けた。手入れされない荒廃竹林が崩れて土砂ダムが決壊し、下流に土石流をもたらしたらしいが、いまはコンクリートの堰堤や3面張りの土木工事だけが粛々と行なわれていた。

香川は雨が少なく農業用の溜め池が多いことで有名だが、山間部の棚田にも小さな溜め池が造られている。冷たい沢水の水温を温める意味でも溜め池は重要なのだろう。このような場所ではブラックバスやブルーギルのヤミ放流はないので、稀少な水生生物が残る可能性が高い。

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しかし、いったん棚田と里山を放棄すれば、生き物たちは激減・消滅していく。里山生物たちは人の手入れ(かく乱)に寄り添って生き続けてきたからだ。たとえば山間部の小さな谷地田や溜め池を、数年放置するだけで、田は藪化し、ヤナギなどの灌木が生え、溜め池は護岸に植物が密生して湖面を浸食し、やがて湿地化してしまう。日本の自然は地力があり湿潤なので(香川県は雨は少ないが平均湿度は関東並みかそれ以上ある)植生の遷移スピードが早い。

ここではボランティアのHさんらの手によって10年以上前から管理が続けられ、絶滅危惧種の淡水魚類や水生昆虫が残った。棚田の一部は神饌田(しんせんでん)として地元の農業高校の生徒たちが田植えや稲刈りに参加し、純粋に稲作の場として維持されてもいる。今日も生徒たちがやってきてチェーンソーでの玉伐りや皮むきを初体験。昼は農業高らしくイノシシ肉入りの味噌汁に自家製の柚子胡椒をごちそうになる(美味!)。

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先に書いたようにこの棚田周辺は沢沿いに台風被害を受けたわけだが、その後、防災ダムの大型堰堤によって谷全体が埋没させられるかというところ、希少種を守る名目で「環境保全型」のダム工事にとって変わった。そして現在は小型の堰堤が分散設置され、沢は多自然型のコンクリート3面張りになり、そろそろ工事は終盤に差し掛かっている。私から見れば「環境保全型」とはとても思えないのだが、それでも溜め池と棚田の一部は残され、工事の際に新たな棚田が造成され、車道が残る。

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もう工事は終わるのだから折り合いをつけていくのがいいのだろう。周囲の山林はスギ・ヒノキがありマダケがある。尾根の岩山にはアカマツが見え、雑木林にはケヤキやホオノキが混じっている。昔は炭焼きも入っていた(奥に窯の跡があるという)。「山親爺」と呼ばれるクヌギの台木がそこかしこに見られる。サルとイノシシが多いので相当苦戦するとは思うが、今後は棚田を再生しつつ、里山を管理しながら、若い人たちの体験の場になればよいと思う。

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ところで伐り時に育ったスギ・ヒノキがすべて建材として使えるかというと、そうではない。ほんらいスギ・ヒノキ成育に向かない場所に植えられたもの、あるいは成育に向いた場所でも手入れが為されず放置された山林では、成長が悪く細い、材の曲がり、片枝、二又、虫食い、病気、などで柱や板に使えない木が多数出てくる。まあ、現在の平均的な荒廃スギ・ヒノキ林では、間伐材を出したとしても、建材として最終商品にそのまま使えるのは2~3割程度と思ったほうがよい。

しかし、むかしの人は曲がり材も丸太のままうまく使ったので、このようなムダはしなかった。現在の技術や制度や商売のスピードが、ムダを促進しているとも言える。そういう意味では、この工事現場のコンクリート構造物と、その側に建つ古民家の納屋の木組みの対比は象徴的だ。

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それにしても、小さな溜め池の生物の豊かさは驚くべきものであった。今は研究者を気取ったマニアによる稀少生物の大量捕獲(盗採取・盗掘)が入るので管理も大変らしいが・・・。

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こんな大きなドジョウは初めて見た! 10円玉に比べた大きさに注目。

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