なぜ稲を実る前に刈る? ― 五名の棚田としめ縄の歴史

今日は、五名の棚田で、N,Fj,Iの3爺とN孫2人でしめ縄用の稲刈り。

「しめ縄用に少し刈るくらいだろう」と思っていたのですが、行ってみると田んぼ2枚分。青々とした稲を、実が入る前にどんどん刈っていく本格的な作業でした。

「せっかく育てた稲なのに、お米を取らないのはもったいないなあ」

そんなことを思いながら作業をしていると、そもそもなぜ、しめ縄には実る前の稲を使うのだろうと気になってきました。

■ 実を取らない「青刈り」(「実取らず」とも)

しめ縄用に、穂が実る前の青い稲を刈り取ることを「青刈り」といいます。

青刈りした稲は、秋の収穫後の藁に比べて柔らかく、しなやかです。縄をなうのに適しているうえ、乾燥させても青々とした色合いや香りが残ります。

お米を収穫するための稲とは、あえて違う時期に刈り取るわけです。

今回刈った稲は、五名から富田神社に奉納し、神社の方々がしめ縄に仕上げます。

田んぼで育った稲が、お米になるだけでなく、しめ縄となって神社に納められる。そう考えると、いつもの稲刈りとは少し違った意味が見えてきます。

■ しめ縄は稲藁だけではなかった

調べてみると、しめ縄の材料は稲藁だけではありませんでした。

その一つが「真薦(まこも)」です。

真薦は、古くから神事に深く関わってきた植物です。

出雲大社では、現在も真薦を使った神事が行われています。毎年行われる「凉殿祭(すずみどののまつり)」では、神職らが真薦を道に敷き、その上を國造が歩きます。神事が終わると、その真薦は参列者に分けられます。

そして、真薦は注連縄にも使われています。

出雲大社では、御本殿をはじめ瑞垣内の社殿の注連縄に、青々とした真薦が使われています。地元農家による注連縄の奉納は、元治元年(1864)以来続いているとされています。

一方、出雲大社の大注連縄でよく知られている神楽殿の大注連縄は、稲藁で作られています。

■ 五名の田んぼにも真薦がある

五名でも、田んぼの一部で真薦を育てています。

真薦が身近にあることを知っていても、それが古くから神事に使われ、今も実際に神事や注連縄に使われている植物だということまで知っている人は、そう多くないのではないでしょうか。

私自身も今回の稲刈りをきっかけに調べてみて、初めて知ることがたくさんありました。

『古事記』の天岩戸神話には、天照大御神が岩戸から出たあと、布刀玉命がその岩戸に「尻久米縄(しりくめなわ)」を張り渡す場面があります。現在のしめ縄につながる古い記録の一つです。

ただし、そこに登場する縄が真薦や稲藁で作られていたとは書かれていません。

今回、実る前の稲を刈りながら、何気なく見ていた稲や真薦が、神事と深く関わってきた植物だったことを知りました。

五名の棚田で育てた稲が富田神社のしめ縄になる。

そして、そのすぐ身近な田んぼには、古くから神事に使われ、今も出雲大社で大切に使われている真薦も育っている。

そう思うと、いつも見ている五名の田んぼの風景が、少し違って見えてきます。

今回の稲刈りは、そんな地域の自然と神事の歴史を知るきっかけになりました。

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